熱電対は微小な電圧を利用して温度を測定します。プローブから計器までのケーブルも測定回路の一部です。全心の導通試験に合格しても、合金の選定ミス、極性の逆接続、高温箇所での接続によって測定値がずれることがあります。購入仕様には、測温精度と布設経路の使用条件を盛り込みます。
発注者を特定しない参考例として、K熱電対の設備で次のような見積依頼を考えます。絶縁4心を2対にまとめ、各導体は20 AWGのより線とし、各心にPFA絶縁、外側にステンレス編組を施します。ケーブルの使用温度は0~200°Cを希望します。これは製造仕様を詰める出発点です。製作可能な構造で見積もるには、延長用グレード、許容差クラス、識別方法、局所的に高温になる箇所と端末の位置も確認します。
K熱電対用延長ケーブルとは
K熱電対は測温接点で異なる2種類のニッケル系合金を接合します。正極はニッケル–クロム(一般にChromel)、負極はニッケル–アルミニウム(一般にAlumel)です。回路には測温接点と基準接点の温度に応じた電圧が発生します。対応する計器は入力端子で冷接点補償を行い、測温接点の温度を求めます。NISTの熱電対基準表
熱電対素線は測温接点を形成するもので、プローブに求められる測温条件に応じて指定します。KX延長導線はK熱電対と同じ公称組成の合金を使い、延長導線に定められた温度範囲で信号を伝えます。一方、KC補償導線は異なる合金で、所定の範囲内におけるK熱電対の温度と起電力の関係を近似します。市場では「K熱電対補償導線」と総称されることもありますが、IEC 60584-3:2021ではKCAとKCBは異なる補償区分です。見積依頼に「KC」としかない場合は区分を確認してください。IEC 60584-3:2021
プローブから熱電対入力までの延長導線を、一般の銅導体の計装ケーブルで代用することはできません。銅との接続箇所が基準接点となり、そこでの温度が計器の冷接点センサと異なると測定誤差が生じます。熱電対信号の測定と補償を済ませた現場用変換器の下流では、銅配線を使える場合があります。KXの仕様承認前に、両極の合金組成、両端の極性、必要な熱起電力許容差を確認します。
20 AWG・2対の熱電対ケーブルの構成
2対は絶縁された信号導体4心を意味します。各対の正極と負極でK熱電対の1測定チャネルを構成します。シースやジャケットを剥いた後も両端で識別できるよう、耐久性のある対番号と極性表示を指定してください。IECとANSIでは配色が異なるため、使用する識別規格と版を明記します。心数だけでは対の組み合わせは決まらず、ドレイン線は信号心数に含めません。
各導体を20 AWGと指定し、素線数、素線径、仕上がり導体寸法が端子に適合するかを確認します。曲がりのある経路や振動のある場所では、より線の方が一般に取り回しやすくなります。固定布設では端子が対応していれば単線も選択肢です。長距離では、提案品のループ抵抗が計器入力の要件を満たすか確認します。ニッケル系合金の対の抵抗は、AWGだけでは決まりません。
以下は見積依頼の参考例です。この組み合わせで供給できるかは、案件ごとの技術確認が必要です。
| 項目 | 要求仕様の例 |
|---|---|
| 熱電対の種類 | K熱電対 |
| 延長用グレード | KX、要確認 |
| 対数 | 2対 |
| 総心数 | 絶縁信号線4心 |
| 導体合金 | 正極はニッケル–クロム、負極はニッケル–アルミニウム。正確な組成は要確認 |
| 導体構成 | より線 |
| 導体サイズ | 各導体20 AWG |
| 心線絶縁 | PFA |
| 外部の機械保護 | ステンレス編組 |
| ケーブルの要求温度範囲 | 0~200°C、連続使用の可否は要確認 |
冒頭の図は構成を示す参考断面です。内シースはオプションで、採用の有無と材質は承認図で決まります。
熱電対用延長ケーブルにPFA絶縁を選ぶ理由
PFAは溶融加工できるフッ素樹脂で、各導体の周囲に押出被覆できます。耐熱性、電気絶縁特性、吸湿性の低さ、耐薬品性から、熱、湿気、薬品にさらされるプロセス設備の配線に適した候補となります。選定時には、薬品の種類と濃度、接触時間、洗浄条件を明記します。密封されていないコネクタやケーブル端部からは水が入り得ます。また、ジャケットや編組の耐薬品性は別途確認が必要な場合があります。ChemoursのPFA樹脂資料
FEPも溶融加工でき、必要な耐熱性が比較的低い場合に適することがあります。高温用途に使われるPTFEは、通常の溶融押出とは異なる加工方法を用います。押出被覆が必要で、提案されたFEP構造より熱的余裕を持たせたい場合はPFAが候補です。実際の選定は、樹脂グレード、絶縁厚、ケーブル構造、連続使用条件、完成品の定格に基づきます。材料の詳細は、FEPとPFAのケーブル絶縁ガイドをご覧ください。
ステンレス編組保護と電気シールドの違い
この例ではステンレス編組が外側の機械保護層です。耐摩耗性を高め、粗い面との接触や外部からの損傷から内部を保護し、ケーブル束を補強できます。想定する機械的負荷、編組端の固定方法、ケーブル支持箇所を指定します。外観が金属製というだけでは、電気的な遮蔽性能は判断できません。OMERINの熱電対・RTDセンサ用ケーブル技術カタログ
| 構造 | 主な役割 | 指定項目 |
|---|---|---|
| ステンレス外部編組 | 耐摩耗保護と機械的補強 | 機械的負荷、編組構造、端部の固定 |
| すずめっき銅編組 | 確実な端末接続を取りやすい導電性の電磁シールド | 編組密度、対別または一括シールド、両端のボンディング方法 |
| アルミ箔とドレイン線 | 対またはケーブル束を高い被覆率で覆う電磁シールド | 箔の重ね幅、ドレイン線との接触、各シールドの端末処理または絶縁 |
すずめっき銅編組は適合する導電性の端末金具でクランプできます。被覆率は編み方によって変わります。アルミ箔はかさを抑えながら周囲を広く覆うことができ、ドレイン線で電気的接続を取り出せます。ドレイン線はシールド接続専用とし、熱電対の信号回路から分離します。箔の重なり、屈曲条件、端末処理によって遮蔽性能は変わります。
インバータ、開閉機器、モータ給電線の近くを通る場合は、必要に応じて機械保護編組の内側に専用の電気シールドを設けます。対別シールドはチャネル間結合の低減に、一括シールドはケーブル束の外から結合するノイズへの対策に役立ちます。計器メーカーの接地指示と設備のEMC設計に従い、各シールドと編組の接続・絶縁箇所を決めます。端末処理図に明記し、施工時に意図した絶縁と導通を維持できるようにします。
ケーブルに求める200°Cとは何か
次の3つの温度条件を個別に確認します。
- 測温接点の温度。 シースや取付方法を考慮して、プローブ先端がプロセス温度に適合することを確認します。
- 延長導線の許容差の適用温度。 導体グレードと許容差クラスは、所定の温度範囲で基準熱起電力特性からどの程度のずれを許すかを定めます。IEC 60584-3:2021でのKXの適用範囲は−25~+200°Cです。クラスと適用する規格の版を明記します。この範囲は熱起電力の許容差に関するものです。
- ケーブルの使用温度。 絶縁、内シースやジャケット、その他の構成部品が、実際の組み立て状態で使用条件に耐えなければなりません。提案構造の連続使用温度範囲を確認し、短時間の温度上昇や施工時温度とは区別します。
たとえば、プローブの測定範囲が0~600°C、延長ケーブルの要求温度が0~200°C、嵌合コネクタが0~100°Cの場合を考えます。先端はプロセス内部に入り、ヘッドとコネクタは高温域の外側に設置できます。ヘッド、コネクタ、ケーブル経路全体の想定温度を、輻射熱による局所的な高温も含めて確認します。プラグが120°Cに達し得るなら、より低温の位置へ移すか、適切な定格のコネクタを選びます。PFA絶縁だけでは完成ケーブルが200°Cで連続使用できるとは判断できません。
K熱電対用延長ケーブルの特注仕様をまとめる
見積比較には次のチェックリストを使います。供給者に構造提案を求める場合は、使用条件と図面承認が必要な項目を明示します。
| 見積項目 | 提示または確認する情報 |
|---|---|
| 1. 熱電対の種類 | K、J、T、E、または計器とプローブで指定された種類。 |
| 2. ケーブルグレード | 延長用グレード、または補償導線の正確な区分。 |
| 3. 導体合金 | 各極の公称合金組成と極性。 |
| 4. 許容差クラス | 適用規格と版、クラス、必要な適用温度範囲。 |
| 5. 対数と心数 | 回路数と絶縁された信号導体の総数。 |
| 6. 導体サイズ | 各導体のAWGまたは断面積。 |
| 7. 導体構成 | 単線またはより線、より線の構成または端子の制約。 |
| 8. 心線絶縁 | PFA、FEPまたはPTFE、必要な絶縁厚や電気絶縁要件。 |
| 9. 識別 | 配色方式、対番号、極性、ケーブルの表示。 |
| 10. 電気シールド | 対別または一括シールド、材質、ドレイン線、端末処理。 |
| 11. 機械保護 | ステンレス編組などの保護構造と想定される機械的負荷。 |
| 12. 内シースと外ジャケット | 材質、外径制限、薬品や水分への接触条件。 |
| 13. 使用温度 | 連続使用範囲、局所高温、短時間の温度変動、施工条件。 |
| 14. 長さと梱包 | 総量、切断長または1ドラム当たりの長さ、ドラム表示。 |
| 15. 試験と書類 | 図面承認、試験方法、合否基準、提出する報告書。 |
プローブやプラグも見積もる場合
プローブごとに挿入長、シース寸法、プロセス接続、測温接点の範囲を確認します。各プラグやソケットについては、コネクタサイズ、オス/メス、嵌合相手、熱電対用接点の種類、極性、ケーブル引込口、設置位置で必要な温度定格を指定します。プローブ、ケーブル、コネクタが異なる温度帯をまたぐ箇所も確認します。端末処理図で、各嵌合箇所と対応するチャネルを示せます。
産業用途
- 石油化学・製油所。 現場のセンサヘッドと監視機器を結ぶ熱電対回路に使用します。経路上の輻射熱と、油や洗浄剤への接触を確認します。
- 発電設備。 ボイラや補機周辺の温度監視に熱電対入力を使います。可能な限りノイズの多い電力線経路から測定配線を離します。
- 製鉄・冶金・熱処理炉。 高温の筐体の外に温度の低い接続点を設け、設備や支持部と接触し得る箇所で機械保護を施すことがあります。
- 化学プロセス。 薬液の飛散や洗浄の実条件に対して、露出する層ごとに適合性を確認します。コネクタとそのシールも対象です。
- プロセス自動化・温度制御。 多対ケーブルで複数のチャネルを変換器盤やPLC入力モジュールに配線できます。試運転で追跡できるよう、対をループまたはチャネル単位で識別します。
DEV CABLEの特注熱電対延長ケーブル
DEV CABLEは中国の産業用特注ケーブルメーカーです。シールド付き熱電対延長ケーブルの製品ラインアップには、K、T、J、Eの工場掲載モデルがあり、複数の絶縁材に対応しています。単対・多対、単線・より線、導体サイズ、仕上がり寸法、電気シールド、機械保護は案件ごとに検討できます。図面と仕様書を添えて、小ロット対応を含む最小発注数量をご確認ください。
PFA、FEP、PTFEの指定や、PFA絶縁とステンレス編組の組み合わせは、案件ごとに構造を確認します。合金グレード、材料の適合性、寸法、使用限界は技術確認の対象です。DEV CABLEは出荷前に全数(100%)の導通試験を実施します。熱起電力許容差の確認、絶縁試験、受入書類が必要な場合は、別途取り決めてください。

